幼馴染は恋をする
「仕事の都合で平日じゃないと都合がつかないらしくてね、会うために休ませたんだ」
あ、今日って休日…。
「今日は代わりに入ってくれる人が見つかったからって、恵和の休みの日に。…まあ、無理して休みを取ったんだとは思う。会うのは最後になるかも知れないから気を遣わせないでゆっくり時間を取りたかったんだと思うよ」
ピー。
「あ、ちょっとごめんね」
カップを出して粉を入れた。コポコポと注ぐ音が聞こえた。
コーヒーの香りがしてきた。
「はい、どうぞ、熱いから気をつけてね」
カップを手に戻ってきた。私の前にはミルクティーが置かれた。柳内さんはコーヒーが入ったカップを持ったまま腰を下ろした。大人はブラックコーヒーだ。
「…有り難うございます」
「時間は?大丈夫なの?」
話は変わってしまった。
「あ、はい、ある程度は…」
「今日はなんて?」
「…え?」
「同級生に頼んでるの?」
「頼んでません。…でも親は知らないです。今日は出かけてるんです。お姉ちゃんの用があって、それで。だから、居ない間に作って…来ました」
目を盗んでってことになる…。こんな日じゃなかったら、どこかを嘘にするか、柳内さんのことを打ち明けない限り来れてない。
「換気扇、回した?匂い、残っちゃうよ?あと、洋服も、案外匂いが付くものだよ?」
「え?あ、匂いますか?」
お醤油の匂いとかしたのかな。袖の辺りをクンクンして髪も掴んで嗅いでみた。
「あ…違うんだ。そういう…なんていうか、そういう、気にする匂いって意味じゃなくてね。…ばれちゃうよって意味でね。外から家に入ると匂いって案外感じるもんなんだよ。だからね、内緒でしたつもりが内緒にならないことになるかもって、ちょっと心配したんだ」
あ…。
「追及された時の言い訳は考えてるのかなって」
「そこは、はい。自分に…、一人だけど、練習に作って食べてみたって言うつもりで。家にも作った物、ちゃんと少しずつ残してあるんです。お母さんに味見してもらうつもりでって。あっ、持ってきた物、味見はしました。私の味覚がずれてなければ……多分、大丈夫だと思います…」
「何を作ってくれたのかな…」
「あ、あの、地味に…きんぴらと、里いもとイカの煮物です…」
「へえ、…凄いな…。そんなの作れるの?煮物なんて家で食べるのは久しぶりかも。後でご飯炊かなくちゃ…」
「あの…」
「ん?」