幼馴染は恋をする
「大丈夫だった?怪我とかしなかった?」
「え?うん大丈夫。心配はそれ?大丈夫だよ、どこも切ってない」
ほらと、手をヒラヒラさせて見せた。
「じゃあ…どれどれ…」
お母さんは保存容器を取り出し蓋を開けてイカを摘まんで口に入れた。
「あ!お母さん、行儀悪いよ」
「…ん、ちょっと固くなったかな。でも味は美味しいわよ?お芋は……よく沁みてるわね」
「固いって…」
「煮過ぎちゃったのね。ずっと煮なくても冷める時に味は沁みるものなのよ。でもこれくらい何でもないわよ、上手くできてるできてる、上できよ」
…本当ならイカは柔らかく仕上げる物なんだ。…はぁ……。
「きんぴらは…綺麗に揃えて細く切ってるけど、随分切るだけで時間がかかったんじゃないの?」
うんうんと頷いてみせた。それは当たってる。丁寧に細く切ったから。ちょっとでも綺麗に見えるように頑張った。
「フフ…便利な物を使って、シュー、シューッとやればいいのよ、ここにあるから」
ほら、これねと引き出しを開けてピーラーを見せられた。ね、これで人参も牛蒡も引いちゃえばって。確かに毎日沢山のおかずを短時間で作るなら使った方が早い。それに確実に綺麗に仕上がる。普段のご飯となったら、私みたいに時間をかけられる作り方なんかしてられないもんね。
「これ、晩御飯の時に食べよう?少しずつになるけどね?」
「うん、あ、いいよ、別に。お母さんに確認して欲しくてちょっとしか作らなかったから」
…ちょっとしか残さなかったから。
「まあいいじゃない、お父さんも食べたいだろうから、朝の作った物」
「…うん、…そうかな」
「何を考えてるか解らないけど」
「え?」
「……朝だってお姉ちゃんだって、直ぐじゃなくてもいつかは居なくなっちゃう。家からね?きっとそれはあっという間なのよね。もう、今だってこんなに大きくなって、こんなことができるようになって……少しでも食べさせてあげてた方がいいのよ」
「いなくなるって結婚とかの話?」
「そうね、そうじゃなくても、自立して家から出たいっていうかも知れないしね」
あ。
「…そうだね」
探られてる気がした。