幼馴染は恋をする

『柳内様
来てはいけないと言われてるのに、約束を守らなくてごめんなさい。こんなことも子供っぽいと思われてると思うけど、これは止めません。続けます。
好きです。 朝』

…ん。はぁ……また来たんだな。……。
こうしてポストに入れられるようになった朝ちゃんからの手紙は歳月を経て溜まりつつあった。
確かに来てはいけないと言った。だから、何かを作って持って来ることはピタリとしなくなった。しかし、その代わりがこれだ。
毎日という訳ではない。ポストに入ってない、もう来なくなったかと思う頃、またこんな風に入れられてる。…はぁ、ということは、俺と、思い方が同じ、ということにでもなるのだろうか。…いやいや、そう都合よく考えることが俺だって…。初めて会った時の印象はあまりにも強すぎた…。あれほど衝撃が走った経験はない。

恵和はこのことは知らない。
手紙という物自体がまだ訳の解らない物体だ。人宛に書く物。“お手紙”という物は知っていても、これが朝ちゃんからの物だと丁寧に説明して話さなければ解らない。
特に文面が変わることはない。ただ毎回書かれているのは好きですという言葉だ。これをずっと綴り続けている。

…高校生の女の子が一体…どれだけの気持ちでこういうことまでしているのか、…正直、その熱量が解らない。…会わなければその内きっと忘れる、好きだと言っていても気持ちも薄まる。そんなものだ。第一、俺の何を知ってる?
ただ知り合った恵和の父親じゃないか。印象が良かったとでも言うのか?若い子から見たら…疲れたオッサンじゃないか…。それを、好きだなんて。パッと見か……いい大人が、好きだと言われて真に受けることじゃない。
何に惹かれたなんて、そんな話になることは俺から避けたし、聞かされてもそこは応えられない領域だ。せいぜい、好きになってくれて有り難うで終わらせる話だ。

あの子は目を引く子だ。恵和が言っていた通り、…可愛い女の子だ。それもちょっと特徴的に。
あの年頃にありそうな、ちょっとヤンチャで髪の色を明るくしているのかと思った。だがどうやらそうではなさそうだった。生まれつき明るい色らしかった。いい子を装っているのではなく、接してみれば真面目そうないい子だった。
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