“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
さっそく、アリアンヌお嬢様にローレル石鹸を持って行くことにした。銀盆の上に置くと、高級品のように見えなくもない。すぐに使えるよう、メアリーさんがぬるま湯の入ったたらいとタオルを用意してくれた。

「アリアンヌお嬢様、失礼いたします」

喪服を纏ったアリアンヌお嬢様は、窓際で刺繍をしていたようだ。美しい鷲の横顔が刺されている。

「素晴らしい刺繍です」

「そう? まだ先だけれど、お父様の誕生日に贈るために作っているの。喜ぶかしら?」

「それはもう!」

職人顔負けの、刺繍の腕前だ。私はまったく刺繍の才能がなかったので、羨ましくなってしまう。そんな素直な気持ちを伝えると、アリアンヌお嬢様は顔を覆うベールの下で微笑みながら言った。

「何も、羨ましく思う必要はないわ。あなたにも、あなたにしかできないことがあるのよ。みんな同じことが得意だったら、つまらないじゃない」

そうだ、その通りなのだ。地球の偉大な詩人も、そんなことを詩にしていたような気がする。

アリアンヌお嬢様は、なんて気高く、凜とした美しい心の持ち主なのか。

まだ出会って数日しか経っていないのに、私はアリアンヌお嬢様のことを、深く敬愛するようになっていた。
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