“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
ヒュウヒュウと冷たい風が吹く中を、歩いていく。行きと同様、ミシェル様は私の手を掴んで歩いていた。

離れに戻ったあと、話がしたいと言われる。お茶を準備しようかと思ったが、いいからと言って遠慮された。そのままミシェル様の部屋に招かれる。

「葡萄酒でいいか?」

「おかまいなく」

そう言ったが、ミシェル様は棚からワインボトルとカップを取り出す。手伝おうとしたが、座っているように言われてしまった。

ミシェル様は暖炉に鍋を吊るし、ワインを入れる。どうやら、ホットワインを作ってくれるようだ。

せっせと鍋をかき混ぜるミシェル様の様子を、ぼんやりと眺める。

「口に合うか分からないが」

ミシェル様は私の隣に腰を下ろし、カップを差し出してくれた。香辛料のスパイシーな香りが、ふわりと鼻腔をかすめる。

「ありがとうございます。いい匂いです」

匂いを吸い込んだら、前世の記憶が甦る。

ホットワインは、クリスマスシーズンの楽しみだった。デパートの催事場でクリスマスマーケットが開催されていて、そこで初めて飲んでハマったのだ。

アツアツのホットワインは、冷え切った体に染み入る。

「おいしいです」

「よかった」
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