“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
化粧水の瓶を胸に抱き、二階まで駆け上がる。アリアンヌお嬢様は、なぜか廊下で私のことを待ち構えていた。

「エリー! ねえ、レティーシアをここに招く話は聞いた?」

「はい」

「相談があるの」

手を引かれ、アリアンヌお嬢様の私室へ導かれる。

「座って」

「失礼いたします」

アリアンヌお嬢様は私の隣に腰を下ろし、頬を薔薇色に染めながら話しかける。

「わたくし、レティーシアをお茶に招待するのは初めてで、どんなふうにおもてなしをすればいいのかしら? せっかくここまで来るのだから、特別な物を出したいの」

「でしたら、アリアンヌお嬢様のお好きなもの──たとえば薔薇水を使ったお菓子とか、お出ししたらどうでしょう?」

「薔薇水?」

「はい。アリアンヌお嬢様の薔薇で、精油を作ったのです。精油はそのままでは濃度が高すぎて使えないのですが、蒸留水で薄めた薔薇水であれば、お菓子の香り付けに使ったり、化粧水として使ったりできるのですよ」

「そうなのね」

「この、蜂蜜薔薇水の化粧ジェリーも、アリアンヌお嬢様の薔薇の精油から作った化粧水となっております」

「蜂蜜薔薇水の化粧ジェリー? 初めて聞いたわ」

おそらく、ジェリー状の化粧品なんて、まだないだろう。瓶を開封し、中身を見せる。

「まあ、不思議。デザートのジェリーみたい。これが、化粧品なの?」

「ええ、そうですよ。試されますか?」

「お願い」

アリアンヌお嬢様の手の甲に、そっとジェリーを乗せる。

「いい香り。おいしそうにも見えるわ」

「そうですね。蜂蜜も入っているので、余計にそう思えるのかもしれません」

「食べないように注意しないと」
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