“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
「わたくし、王太子妃候補の試験の成績がよくなくて、悩んでいたら額や頬がニキビだらけになって……」

アリアンヌお嬢様の細い肩には、大きな大きな責任が圧しかかっていたのだろう。

つらいとも言えず、今までたった独りで戦ってきたに違いない。

「王太子妃候補の立場が危うくなって、公爵家の本邸の居心地が悪くなって、お父様のお顔も、新しいお母様のお顔も見たくなくて、離れに行くことを決めたの。レティーシアは、わたくしに逃げるつもりなの? と聞いてきたわ。それに対して、何も言えなかった……」

レティーシア様は離れに逃げることを責めていたのではない。離れに行ったら寂しいと言えなかっただけだ。

私がそれを伝えても意味がない。レティーシア様の口から、きちんと言わなければいけないのだ。

「レティーシアは何も悪くないわ。悪いのは、わたくしの弱さ」

ぎゅっと、胸を締め付けられる。十四歳の少女がここまで自分を責めなければいけない世の中が存在するなんて、いまだに信じられない。けれど、これが貴族として生まれた女性の生き方なのだ。

自分は弱いと言い切ったアリアンヌお嬢様の横顔は、凛としていた。
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