“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
「そういえば、昨晩、旦那様がお部屋で倒れていたって」

「ええ、でも、何事もなかったかのように静まり返っていたけれど」

「お医者様は?」

「それが、奥様が看病するから、必要ないって」

今日は顔色が若干悪かったものの、夫婦揃って会食に出かけたようだ。

「ねえ、もしかして、奥様が旦那様に何か──」

「あなた、気を付けなさい! その話題は、ダメよ。タニアが大変な目に遭ったの、知らないの?」

「え、ええ、そうね」

話の流れから推測するに、デルフィネ様の噂話は禁句扱いになっているようだ。

「新入り、あなたも気を付けなさい。酷い目に遭うから」

「酷い目、というのは?」

「口にするのにも恐ろしいことよ」

「わ、わかりました」

いったい、どんな恐ろしいことがあったのか。使用人は皆、デルフィネ様を恐れているように思えた。
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