“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
どれだけ私達は見つめ合っていたのか。ただ、その時間は永遠ではなかった。

「まあ、いいわ」

その言葉が、頭の中でぐわんぐわんと響き渡る。意味を理解するのに、しばらくかかってしまった。

デルフィネ様は去り、姿が見えなくなった瞬間に我に返る。

私は逃げるように、公爵家の裏口から外へと飛び出した。

いったん街に出て変装を解き、離れに戻る。

帰宅しても、胸の鼓動は治まらなかった。額から滴るほどの汗をかき、手先は震えている。

デルフィネ様の注文書を手放さない限り、落ち着くことはないだろう。

まっすぐ、ミシェル様のもとへ向かった。

「ミシェル様、いらっしゃいますか?」

「エリー?」

すぐに、ミシェルは扉から顔を出してくれた。私の手を引いて、部屋の中へと引き入れてくれる。

それと同時に膝から力が抜け、倒れそうになった。

「エリー!」

「ううっ、すみません……」

ミシェル様が抱き寄せ、体を支えてくれる。ふわりと体が浮いた。なんと、ミシェル様がお姫様抱っこをしてくれたのだ。

そっと、長椅子に下ろされる。

「エリー、大丈夫か? 双子を呼んだほうがいいか?」

「いえ、平気です。それよりも、これを……」

震える手で、注文書をミシェル様に差し出す。ふたつに折りたたんだ紙を開いた瞬間、ミシェル様は瞠目した。そして、デルフィネ様の署名を見つけたのか、表情はだんだんと険しくなっていく。
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