“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
「エリー、これをどこで? 危険を冒したのではないか?」

ミシェル様は私の額の汗をハンカチで拭い、震える手を握ってくれる。

「偶然、デルフィネ様宛の荷物を持ってきた商人に検品を頼まれて、こっそり持ち帰ってきました」

「そうだったのか。怪我はないのか?」

「平気です。こんなことをしたことがなくて、動悸と息切れをしているだけです」

しばらくしたら落ち着くと言ったら、ミシェル様は小さな声で「よかった」と零す。

「それにしても、驚いた。注文書に書かれているこれらは毒だ。しかも、錬金術師が扱う毒だろう」

「それって、どういうことでしょう?」

「まだ、定かではないが、これらの毒物で錬金術を使っている可能性がある」

「!」

デルフィネ様は反魔法派だ。魔法を嫌っていて、使用人が使うことも許さない。

「魔法嫌いは、自身の錬金術による悪事を隠すためかもしれない」

「それは、ありえますね」

ミシェル様は私から手を離すと、今度は深々と頭を下げる。

「よく、これを持ち帰ってくれた。注文書は、我々の切り札となるだろう」

「よかったです」

「潜入調査など、危険なことをさせてしまい、すまなかった。怖かっただろう?」

「いえ、アリアンヌお嬢様のためですので、なんてことないですよ」

アリアンヌお嬢様が安心して生活できるためならば、なんでもできる。そう言ったけれど、手は震えていた。慣れないことだったが、結果を出すことができた。その安堵感から、気づかない振りをしていた不安や恐怖心が、ドッと押し寄せてきたのだろう。

「エリー……」

「す、すみません、すぐに、治まるので」
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