“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
「ごきげんよう」

「ああ、お嬢さんか。今日は、どうしたんだい?」

「足湯を持ってきたの。ポカポカになるはずよ」

「足湯……初めて聞くな」

ルメートル公爵の足元へ持って行き、足湯の説明をする。

「こちら、薬草入りのお湯でして、十分ほど浸かっていると、体の冷えが改善されます」

「なるほど。言われて見たら、足先は冷えている気がする」

「お靴と靴下を、脱がせてもいいかしら?」

「悪いね」

「よろしくってよ」

ルメートル公爵の靴の紐を解き、丁寧に靴と靴下を脱がせる。アリアンヌお嬢様が「どうぞ」と言ったら、ゆっくり足湯に浸かっていた。

「ああ、これは、温かくて気持ちがいい。香りもいいね」

「体にいいローズマリーがたくさん入っているのよ」

アリアンヌお嬢様が笑顔を浮かべると、ルメートル公爵もつられて微笑む。親子の様子に、心が温まった。これで、記憶がもとに戻ればいいのだけれど……。

「湯の中の薬草を踏んでいると、なぜかとても、懐かしい気持ちになる」

そういえば、アリアンヌお嬢様が草原にピクニックに行った時に、ルメートル公爵と裸足で追いかけっこをした話をしていたような。その日の記憶が甦ってきたのか。

「私は、アリアンヌと、妻と──ううっ!」

「お父様!」

ルメートル公爵は頭を抱え、苦しみだす。

もしかして、記憶が戻りかけているのか。護衛を呼び、ルメートル公爵を寝台まで運んでもらった。アリアンヌお嬢様は、再びつきっきりで看病していた。
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