“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
夜──公爵邸は静まり返っている。アリアンヌお嬢様は、疲れて眠ってしまった。ミシェル様が寝室へと運び、メアリーさんが傍に付いてくれている。

「エリー、いろいろと、ご苦労だった」

「いえ……、私は何も」

ミシェル様はこのままアリアンヌお嬢様の護衛に就くらしい。

「エリーは、離れに戻るのか?」

「はい」

「あと三十分で休憩時間となる。待っていてくれたら、離れまで送るが?」

「いえ、大丈夫です」

「しかし──」

「ミシェル様は心配症ですね。私の父のようです」

「父……」

そう言ったら、引いてくれた。ミシェル様は忙しいのに、私に構っている場合ではないだろう。

「では、また明日」

「ああ」

ミシェル様と別れ、離れに戻る。

公爵家の螺旋階段を下り、長い廊下をトボトボと歩く。

なかなか、事態は思うようにいかない。ルメートル公爵の記憶さえ戻ったら、あとはデルフィネ様の罪を聞いてもらい、どうするのか判断してもらえるけれど。
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