“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
さっそく、石鹸に鼻先を近づける。くんくんと香りをかいだが──無臭だった。

「え!?」

期待外れの結果に、愕然としてしまう。これは、どういうことなのか。これほどまでにきれいな色が出ているのならば、豊かな香りがするはずだ。

「もしかして、ただの石鹸に、色を付けているだけなの?」

「なんですって?」

返事があったので、驚いて振り返る。メアリーさんが、脱衣室からひょっこりと覗いていた。

「お湯はいかがですか? 温くないですか?」

「あ──はい」

「服のままで、どうしたんで?」

「あの、この石鹸、アリアンヌお嬢様の物ですよね?」

「そうですよ。薄紅色の石鹸なんて、珍しいでしょう? アリアンヌお嬢様のお気に入りなんです」

わざわざ隣国から取り寄せて使っているらしい。この国にはないものだと知り、さらに興味が惹きつけられる。
< 31 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop