“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
「アリアンヌお嬢様、今日のお召し物はこちらをご用意してみたのですが──」

メアリーさんが持ってきたのは、すみれ色のモーニング・ドレスだ。アリアンヌお嬢様はプイっと顔を逸らし、「いつもの黒いドレスを」と命じる。メアリーさんはがっかりした様子で、衣裳部屋へトボトボと歩いていった。

おそらく、アリアンヌお嬢様が喪服を纏うのは、肌荒れと青白い肌を隠したいからなのだろう。気持ちはわかるけれど……。

「エリー、あなたはお薬を塗ってちょうだい」

「かしこまりました」

アリアンヌお嬢様は、毎日肌をきれいにするクリームを塗っているようだ。たしか、猫の絵が描かれた缶の中に入っているという。薬箱から取り出し、アリアンヌお嬢様に間違いないか確認する。

「こちらで間違いないでしょうか?」

「ええ、そうよ」

「可愛らしい缶ですね」

ポツリと呟いたあと、ハッとなる。お仕えする相手に話しかけるなど、あってはならないことだ。例外はミシェル様の母君であるラングロワ侯爵家の大奥様のみ。

うっかりしていて、大奥様に仕えていた時の癖が抜けきっていなかったのだろう。

無視されるのかと思っていたが、アリアンヌお嬢様は目を輝かせながら言葉を返してくれる。
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