“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
「美容クリームは、原材料が判明するまで、使わないほうがいいわね」

「はい、そのほうが、よろしいかと」

「下町の錬金術師なんて、怪しいもの」

「はい……」

美容クリームについて、使わないほうがいいと進言しようか迷っていたのだ。アリアンヌお嬢様は下町の錬金術師という胡散臭い存在に、疑問を覚えてくれたようで深く安堵した。

「それで、代わりと言ってはなんですが、肌質を改善する石鹸を、今から作ろうと考えておりまして」

「石鹸?」

「はい。ローレルオイルを使った、肌によい石鹸です」

「へえ、あなた、石鹸の作り方を知っているのね」

「はい。趣味で、その、作っていた物なのですが。姉達も絶賛しておりましたので」

姉達の絶賛というのは前世での話だけれど、まあ問題ないだろう。

かなり使い心地がよかったようで、姉達から「石鹸で商売すればいいじゃん」と言われたくらいだ。

実際に石鹸を売るとなったら、個人でするにしても少々面倒くさいことになる。

ます、化粧品販売業の許可を取らなければならない。でないと、薬事法違反となってしまう。

まあ、これは日本で販売する場合の話だけれど。

幸い、ここの世界はそんな決まりはない。別に販売するわけでもないので、問題ないだろう。

「手作り石鹸、楽しみにしているわ」

「はい。しばし、お待ちを」

今度こそ、アリアンヌお嬢様の期待を裏切ってはいけない。きちんと作って、肌質改善を目指さなければ。
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