“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
「よくわからないって顔をしているね。実は、ミシェルは父君を亡くした母親が心配でちょこちょこ実家に帰っていたようだ。けれど、喪が明けても戻っていたようだから、よほど母君が心配なんだと噂していてね。けれどある日、ミシェルが銀糸の薔薇模様の入った白いリボンを贈り物として選び、実家に行ったという話を聞いて、やっと春がきたんだな~と」

「殿下、なぜ、それを?」

「妹の御用達のお店と、君がリボンを買ったお店が一緒でね。商人から聞いたんだよ。一時期、ミシェルは誰のリボンを買ったんだ、と噂になっていた」

噂を聞いた貴族のご令嬢は、銀糸の薔薇模様のリボンを結んだ令嬢がどこにいるのか、血眼で探していたらしい。

「でも、見つからなかったって、みんな、残念そうにしていたよ。でも、まさかここにいたとは」

王太子殿下はそう言って、私の髪を結んでいたリボンに触れた。そして、耳元で囁かれる。

「ねえ、知っていた。この薔薇、ミシェルが持っている儀礼称号、ローゼンハルト家の家紋なんだよ」

儀礼称号というのは、爵位を持たない貴族が儀礼的に名乗ることが許される栄誉称号だ。ミシェル様が儀礼称号を持っていることは知っていたけれど、名前や家紋までは知らなかった。私が日常的に使っているこのリボンに、そんな意味があったなんて。

だから皆、血眼になってまで贈った相手を探していたのだろう。
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