“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
「こういう時は、やり方がある」

何か、特別な交渉方法でもあるのか。ミシェル様の手腕を拝見させていただく。

「扉から離れておけ」

弟子ふたりが後退すると、ミシェル様はすーっと息を吸い込んだ。もしかして、大きな声で呼ぶのだろうか。

そんなふうに考えていたが、見事に外れる。

ミシェル様はその場でトン、トンと飛んで一歩踏み出したあと体を捻り、体を回転させながら渾身の蹴りを扉へと打ち込んだ。扉が大きく音をたて、開かれる。

びっくりした。涼しい顔をして、まさか蹴りを扉に入れるなんて思いもしなかった。

弟子二名は仲良く手と手を取り合って「わ~!」と声をあげて喜んでいた。

「うわっ、何事!?」

想定外の事態に、誰かが声をあげる。長椅子で仮眠を取っていたようで、飛び起きていた。

「誰?」

「私だ」

「ミシェルじゃないか」

寝ぼけまなこでこちらを見るのは、琥珀色の髪に金の瞳を持つ眼鏡をかけた美少年。寝起きだからか、機嫌が悪そうに見える。

服の上から国家錬金術師の竜の刺繍が入った深紅のローブを纏っていて、恰好だけは錬金術師らしい。
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