新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「そんな、皐月くんが謝ることなんてないよ」

「違う。……守るって決めたのに。俺は、何もおまえの力になれてない」



吐き捨てるように言った皐月くんが私の左手をそっと包み込んだから、ドキッと心臓が大きくはねた。

少しかさついたその親指で、銀色の指輪を撫でる。



「本当は……こんなモノに、何の意味もないのかもしれないな」



まるで、ひとりごとのようなささやきだった。

皐月くんへの恋心を自覚してから、私はいつも彼の一挙一動に踊らされている。

今も触れられていることに驚いて、恥ずかしくて、うれしくて──だから胸のドキドキがとんでもないのに、そのささやきを聞いた瞬間、私の心は冷水を浴びせられたようにひやりと冷たくなった。

同時にわき起こるのは、今日までに何度もよぎった懐疑心。

この家に来た最初の日、夫婦別々の寝室を見たとき。

コーヒー好きの彼が、私が働くカフェに1度も来たことがなかったと知ったとき。

昨日の花火大会の夜、勇気を出して肉体関係について言及した私を、拒絶したときの表情。

それ以外にも、ふとした瞬間ひっかかりを覚えることがたびたびあって……それはずっと、消えることがなかった。
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