新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
『契約結婚』。

どこかで変だと思いながら、それでも彼に告げられたその真実が信じられなくて、言葉を失った。

硬直する私に、皐月くんはさらに続ける。



「今日まで黙っていたのは、悪かった。ただでさえ記憶を失くして大変な中で、このことを素直に伝えるのはおまえの負担になると思ったんだ。……ずっと記憶が戻らないままだったら、いずれ、時期を見て話す気ではいた」



本当に申し訳なさそうな表情でそう語る彼を、今は責める気にはならなかった。

ただ、小さく訊ねる。



「契約、結婚っていうのは……私たち以外にも、誰か知ってるの?」

「いや、誰にも言っていない。俺と礼だけの、秘密だ」

「……私たちの、利害の一致って?」



冷めかけたコーヒーの入ったマグカップを包む両手に、力がこもった。

僅かな時間逡巡したあと、皐月くんがゆっくりと話し始める。



「俺は……昔から、結婚願望というものがなかったんだ。だけど今の職場のある程度上の世代は、時代にそぐわない古い考えが根付いてる人が多い。特に30を過ぎた頃から、周囲に『早く結婚しろ』だとか『独身は出世できないぞ』だとかいろいろ言われるようになって、辟易してた。本部はそういうタイプの役席が多い分、上司の娘さんとの見合い話まで持ちかけられそうになるし」



うんざりしたように吐息をこぼし、彼は続けた。
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