新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
もう……他の人を好きになれる気がしない、なんて。

そんなにも想える相手に、“私”は出会っていた。

だけど想いは報われることなく、“私”はその恋心を、一生自分の中に抱えたまま生きていくと決めた。

それが本当なら、未来の“私”はなんて頑固で、一途で……どうしようもない不器用なのだろう。



「相手のことは、後にも先にも俺はハッキリと聞いていない。だけど……たぶんアイツだろうと予想できる奴はいて、きっとそれは、当たってるはずだ」

「誰?」



今の自分は出会っていない人かもしれないけれど、反射的に訊ねていた。

皐月くんが、言いづらそうにつぶやく。



「……菊池」



その名前を聞いた瞬間。脳裏に浮かんだのは、産まれたばかりの赤ちゃんを中心に幸せそうな笑顔を浮かべる、先日目にしたばかりの菊池くんとほのかの姿。

──……ああ、そうなんだ。

そっかあ、“私”、自分の親友の旦那さんになる人のことを、本気で好きになっちゃったんだ。

このことを知って、今、腑に落ちた。先日ほのかたちの家から自宅に戻る帰路の途中、突然涙が止まらなくなったあの出来事。

あれは……きっと、そういうことだったのだ。

おそらく“私”は大好きな彼と親友の結婚式で、自分の入る隙なんてないふたりの幸せな姿を目の当たりにし、打ちのめされたんだろう。

帰り道、思わず会社の同期に、自分の悲しい決意をこぼしてしまうくらいに。
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