新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
……馬鹿だな。

結果こうして、その大切な同期をも巻き込んだ大きな秘密を抱えることになったんだから……本当に、馬鹿。

始終神妙な様子で話す皐月くんが、作り話をしているとは思えない。

つまりこの結婚は本当に、愛のない契約結婚だったんだ。

記憶があってもなくても……最初から皐月くんは、私のことなんて好きではなかった。

菊池くんに叶わない恋をしていた“私”も皐月くんのことは好きじゃなかったんだから、そこはおあいこで、いわば私たちは共犯者。どちらも責めることはできないんだろう。

ただ、今の私だけが──皐月くんに恋をしている私が、勝手に傷ついているだけだ。

改めて自分のひとりよがりを思い知ったそのとき、脳内にまた、映像が流れ込んできた。

以前にも、見たことがあるシチュエーション。けれどそのときよりもっと鮮明で、違った場面から再生が始まる。



『……本当によかったのか? すぐ家に帰らなくて』



白いワイシャツの袖を捲りながらそう話すのは、テーブルを挟んだ向かい側に座っている彼。当時はまだ、『越智くん』と呼んでいた。

ここは、そうだ。彼が私にプロポーズをしたという、あの居酒屋。

先日思い出した記憶よりも、たぶん、少し前のシーンだ。

どことなく心配そうな彼の言葉に、“私”はわざとらしいくらい明るく答えた。
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