新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
深々と頭を下げた私に、越智くんが何度目かになる同じ質問をする。

そしてそれまでにされたすべてのときと同じように、私は首を横に振った。



『うん、大丈夫。きっと西田さんも、ちょっとムキになってやりすぎちゃっただけだと思うし』

『それが、問題なんだけど』

『いいんだ。今日越智くんが話してくれて、それで目が覚めたと思うから』



ニッコリ笑った私を、越智くんは微妙な表情で眺めている。

そうしてため息をつき、目の前のビールジョッキを持ち上げた。



『宮坂は、自分以外の人間に優しすぎるな。それでいつか身を滅ぼさなきゃいいけど』

『えー、こわいこと言わないで欲しいな。それに私、そんなふうに言ってもらえるほど、優しい人間なんかじゃないよ』



浮かべた笑みを苦笑に変えて、視線をテーブルに落とす。



『ほんと……どうして西田さんは、私なんかに好意を持ってくれたのかなあ』



ほとんどひとりごとのような私のつぶやきに、ピクリと越智くんが反応したのがわかった。

グラスを手にした私が中のレモンサワーを喉に流し込んだタイミングで、彼がまた口を開く。



『前に……宮坂言ってたな。一生、結婚するつもりないって』

『……うん。越智くんも、でしょ?』

『そうだな。でも、もしかするとした方が生きやすいのかもしれないとは、最近思ってる』



やけに神妙な様子でそんなことを言う越智くんに『どういうこと?』と続きを促した。



『周りがうるさい。「なるべく早いうちにしておいた方がいいぞ」とか、あとは「出世に響く」とか』

『あはは。まあねぇ、たしかに、越智くんはもったいないと思うよ』



すると彼が、レンズ越しのまっすぐな眼差しを私に向ける。
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