新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「そう、なら──私たちの間には、夫婦らしい触れ合いとかも、何もなかったってことなんだね」



一瞬彼が、答えるのをためらったように思えた。

けれども結局、静かに首肯する。



「……ああ。肉体的な関係も……キスも、一切したことはなかった」



──じゃあ、昨夜のキスは、なんだったの?

そう聞いてしまえればよかったのに、できなかった。

だってきっとあれは……夜闇の中並んで花火を眺める、あのロマンチックな雰囲気にのまれて、なんとなく引き寄せられただけ。

ただそれだけの、何の意味もないものだったのだ。

その事実を、改めて彼の口から聞かされたくない。

臆病な私は、ただ目を伏せて苦笑を漏らす。



「そっか。じゃあ、あたりまえだよね。今の私とも……“そういうこと”なんて、できるわけないよね」



それが昨夜のやり取りを指しているのだと、皐月くんは気づいたようだった。

うつむく私に表情は見えない。ただ小さく、「ごめん」とこぼれ落ちたその謝罪が、深く深く、胸を抉る。

気を抜けば今にも泣き出してしまいそうで、私はソファから立ち上がった。



「皐月くん、ごめんね。外で夕飯食べる約束……私ちょっと体調良くないから、パスさせて」
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