新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
結婚の事実自体覚えていなくたって、記憶を失った彼女が1番頼らざるを得ないのは、きっと、夫である俺のはず。

彼女の性格上、記憶喪失などといつまで続くかも不透明なこの状況において、遠く離れた実家の両親に助けを求めるのは『心配をかけたくない』という理由で躊躇するだろうと予想できた。

なるべく早く記憶を取り戻すためにも、これまでと同じような生活を続けることを望むだろう。

それなら俺にも、やりようはある。ひとまず彼女には、この結婚が見せかけのものだということは伏せておこう。

今までずっと、ブレーキをかけていた分も、礼にはひたすらに優しくして、過保護なくらい甘やかす。

彼女がいつか記憶を取り戻したとしても、ずっとこのままだったとしても……もう、俺なしでは生きていけないと思うくらい、礼にとって1番安全で安心できる拠り所になれるように。

そうして、できれば──俺のことを、愛してくれるようになってくれたら。

礼の退院の前日、マンションの彼女の部屋にまとめられていた荷物をできるだけ元通りに片づける俺は、そんな最低な願いを胸に秘めていた。

事故が起きたあの日……なぜか礼は、私物をダンボールやトランクに詰めて置いていた。

それを見つけたのは偶然で、もし俺が早く帰宅してさえいなければ、きっと礼はあの公園の階段で足を滑らせることもなく、今まで通りここで暮らしていたんだと思う。
< 200 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop