新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
『……須藤、人の妻をジロジロ見るな。それと“クール”やら“色っぽい”やら好き勝手言ってくれるが、礼はかわいい。俺の前では底抜けに』

『あ、サーセン……』



気づけばムッとした感情のまま、つい条件反射で思ったことを口にしていた。

俺を見る須藤の少し引いた目と間の抜けた返事が脳裏によみがえり、己の失態を再確認して頭を抱えたくなる。

まあ、言ってしまったものは仕方ない。それに職場での俺は、とっくの前から愛妻家認定されているのだ。今さら多少惚気けたところで、周りも普通に流してくれるだろう。

実のところ──……俺たちが互いの気持ちを伝え合って本物の“夫婦”になれたのは、つい2週間ほど前だったりするのだが。

ずっと菊池のことを忘れられずにいると思っていた彼女は、なんと、この結婚の前から俺に想いを寄せてくれていた。

その事実を知ったときは、今まで経験したことのないほどの驚愕で──だけどそれ以上の歓喜に、心と身体が震えた。

俺たちは互いを想うあまり、自分の気持ちをしまい込んですれ違っていたのだ。

礼にとっても俺にとっても、入籍してからの1年以上は、幸せと同時に苦しい日々だった。

だけど今はそれを補って余るほどの、曇りのない幸福に満ちている。
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