新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「お風呂も、まだなのに……」

「どうせ汗かくんだから、風呂の前の方が都合はいいだろ」

「そういう問題じゃないの! 私にも、好きな人に見られる前にちゃんと綺麗にしておきたいっていう乙女心があるんだから」



頬を膨らませて話す彼女にまたいとしさが込み上げて、こめかみに口づけを落とす。

そこから唇をずらし、小造りな耳殻に触れたままその場所でささやいた。



「いいよ、礼はそのままで。俺はなんにも飾ってない、ありのままの礼が見たいから」



言い終わると同時に彼女が着ているチェック柄のシャツの裾から手を入れ、へその上あたりを撫でる。

その刺激に「んっ」と小さく吐息のような声を漏らし、うるんだ瞳の礼は眉を寄せた悩ましい表情で俺と視線を合わせた。



「……もう全部、見られた気がする」

「まさか。まだまだ全然足りない」



笑い混じりに言って、そのまま唇に噛みついた。

早々に口内に差し込んだ舌で好き勝手していると、彼女も必死で応えようとしてくれる。

いじらしい行動がうれしくて、深くふたりの舌を絡ませ合ったまま礼の髪をそっと撫でた。

出会った頃からずっとロングヘアを保っていた綺麗な黒髪を、彼女は俺との結婚生活がスタートする直前にバッサリ切った。

当時はなんとなく聞けずにいたが、つい最近思いたって訊ねてみると、あれは見せかけの夫婦を演じることに対する彼女なりの覚悟の表れだったらしい。

現在も肩にかからないくらいの長さで揺れるウェーブヘアをつまみながら「まあ、今は手入れが楽っていうのもあってこの長さのままだけど」と明るく笑った彼女を、俺はなんとも言えない感情で見つめていた。
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