新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
ちょうど階段の真下にきたところで皐月くんが足を止めたので、私も同じように停止した。



「ここが、例の階段。どうだ? 何か感じるか?」

「えっと……」



彼の問いかけに声を漏らしながら、目の前にある長い階段を見上げる。

何の変哲もない、コンクリート製の階段だ。
これを見たからって、何らかの記憶が呼び起こされる感覚は特にない。

もっとこう……何か鮮烈な感じに、脳が刺激されたりするのかと思っていた。

それがこわくもあったけど、ちょっと、拍子抜けだ。

内心がっかりしながら、左隣にいる皐月くんに顔を向ける。



「こうして見る限りじゃ、特には何も感じないかな。このまま上ってみる」

「気をつけろよ」



すかさず返ってきた彼のセリフに、思わず苦笑しつつ足を踏み出した。

やっぱり、過保護だ。私はともかく、皐月くんいつもこんな調子で疲れちゃわないのかな?

……早く全部思い出して、安心させてあげたいなあ。

彼の忠告通り、手すりを掴みながらゆっくりと階段を上がっていく。

皐月くんは今度は私の斜め後ろにつき、きっと不測の事態に備えているのだろう。

もし足を滑らせてもあのたくましい腕が受け止めてくれると思ったら、恐怖心はわいてこなかった。
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