新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
私の言葉にうなずいた皐月くんが、また、何かを思い出したようにくつくつと笑いだす。



「皐月くん?」

「いや……さっきの礼の顔、思い出して。深刻そうな表情で切り出すから、何事かと思った」



首をかしげた私にそう答えた彼は、口もとをこぶしで隠しながら一応は笑いを堪えようとしている。

だけど、とっくにもう手遅れだ。

私はさらに、羞恥心でかーっと頬を熱くした。



「だ、だって……」

「『だって』?」

「……緊張、して」



ポソポソ小声でつぶやく私を正面から眺める彼が、愉快そうに目を細める。



「『緊張』?」

「う、緊張……ねぇ、あの、おもしろがるのはやめてよぅ」



情けない声音で抗議したところで、ようやく皐月くんは笑い混じりに「悪い悪い」と追及を許してくれた。

いつも優しい彼の、ちょっと意地悪なところ。

それをこうして見せられても全然嫌悪感は浮かばないんだから、ほんと、私って根っから皐月くんのことを信用しきってるんだと思う。

……そして、もうたぶん私は、信用だけじゃなくて──……。



「そうだ、礼。俺からも、話したいことがあるんだ」



不意に皐月くんがやわらかかった表情を引き締め、切り出した。

彼の様子の変化に、今度はこちらがドキリとする番だ。

自然と背筋が伸びる。
そうして皐月くんの口から聞かされた話は、私にとってとても予想外のものだった。
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