新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
そっかあ……あのほのかと、菊池くんが。

普通に考えて、私をキッカケにふたりは知り合ったのだろう。社会人になった時点で、ほのかには彼氏はいなかったはずだし。

あ、でも、思いのほか世間は狭かったりするからなあ。

別に私経由じゃなくたって、いくらでも馴れ初めは考えられるかあ……。

無言のままそんなふうにつらつらと考える私は、自分でも少し意外に思うくらいに、何のショックも受けていなかった。

もちろん、とても驚いてはいる。

だけど、それだけ。ふたりを祝福する気持ちはわいてきても、悲しいという気持ちは驚くほど感じない。

気になっていた彼と学生時代からの親友が、いつの間にやら結婚して子どもまで産まれていたというのに……きっとそれほど今の自分が、別の誰かに心惹かれているからなのだろうと、どこか冷静に分析する。

そしてその“別の誰か”とは、まさに今、目の前にいる人物のことで。

今の私には、皐月くんだけ。

そう、断言できるほどの根拠は──もうとっくに、私の中で生まれているのだ。



『……それで、礼』



ぼんやりしていた私は彼の声にハッとして、テーブルに落としていた視線を上げた。

目が合った皐月くんは一見無表情だけど、僅かに寄せられた眉根や引き結ばれた口もとが、なぜか苦しげな様子にも感じられて少し戸惑う。
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