新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
けれども話を続けた彼の口調は、そんなのは気のせいだったと思わせるような淡々としたものだった。



『今日、菊池から連絡がきて。急なんだけど今週の日曜日、俺たちふたりであいつらの家に遊びに来ないかと誘われたんだ。子どもが産まれて1ヶ月経って、落ちついてきたからって』

『え』

『悪い。子どもの顔を見に行くのは前々から約束してたことだったから、無碍に断るのもできなくて……けど、礼が無理そうならもちろん断ってもいい。あのふたりは、おまえの記憶喪失のことも知らないし』



ゆっくり、私を不安にさせないような表情と声音で、話してくれる皐月くん。

少し、悩む。考えることはいくらでもあった。

だけどすぐ、結論は出る。



『……うん、わかった。行こう、皐月くん』

『いいのか?』



本当に驚いたように目を丸くしている彼に、笑ってみせた。



『うん。今のほのかと菊池くんがどんな感じか見てみたいし、ふたりの赤ちゃんにも会いたいな』

『大丈夫なのか?』



皐月くんが少し早口でそう言うから、私は今度は思わず笑い声を漏らしてしまう。



『ふふっ。皐月くん、どうしてそんなにびっくりしてるの? ……大丈夫だよ。皐月くんが一緒なんでしょ?』



こちらの問いかけに一瞬ポカンと動きを止めた彼が、すぐに大きくうなずいた。



『ああ、もちろん』

『なら、私は何も不安に思うことないかな。だから大丈夫。菊池くんとほのかに、会うよ』



少しの間、お互い無言で静かに視線が絡む。

そうして、皐月くんは私と目を合わせたままうなずいた。



『……わかった。じゃあ、菊池にはそう返事をしておく』

『うん、よろしくね』

『ああ。……だけど気が変わったら、いつでも言っていいからな』

『ありがとう』



やはりここでも心配性な彼に、当日がくるまで何度も『本当に大丈夫か?』と確認された。

だけどそのたび私は、笑って『大丈夫だよ』と答えて……そして今日、いよいよ菊池夫妻と対面している。
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