新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「外暑かったでしょ~? ソファでもラグでも、好きなところに座ってくつろいで!」

「うん、ありがと」



満面の笑顔でリビングに私たちを通してくれたほのかに対し、こちらも笑みを浮かべながら答える。

うん、全然変わってない。パッと見て違うとわかるのは、髪型くらいだ。

私のあとに続いてリビングに入った皐月くんが、持っていた紙袋を菊池くんに手渡している。



「これ、俺たちから出産祝い。よかったら使って」

「おお、わざわざ悪いな」

「越智くんも礼もありがとね~。さっきね、ちょうど起きたとこだよ」



言いながらほのかが部屋の片隅にあったベビーベッドへと近づき、その中でひとりお利口さんに寝転がっていた赤ちゃんを抱き上げた。

眠そうに目をしばたかせるその子を覗き込みながら、私の口から自然に「わああ」と感嘆の声が漏れる。



「かっ、かわい……っちっちゃ! ちっちゃいねぇ!」

「んふふ、これでも産まれたときから1キロ増えたんだけどね。今は4キロないくらいかな」



安心しきった様子で腕の中にいる、小さないのちを見つめるほのか。

優しげな眼差しを我が子に向けるその横顔は、学生時代に見慣れたはずの彼女よりずっと大人びていて。

変わっていないと思ったけれど、たしかに変化しているところはある。

それがくすぐったくて、うらやましくて……少し、寂しい。

私の記憶喪失のことは、よっぽど必要に駆られる状況とならない限り、ほのかたちには言わないと決めた。

30代目前の今もこうして繋がりがあるような大切な友人たちに、余計な心配はかけたくない。

そんな理由からこの決意を皐月くんに伝えたとき、彼は「礼らしいな」と苦笑していた。

──……ほら。

こうやって自分のことを深く理解してくれている人が、そばにいる。

だから私は自分の中の空っぽな部分を必要以上におそれることなく、日々穏やかに過ごせているのだ。
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