新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「赤ちゃん、ちっちゃくてかわいかったねぇ。目もとがすごく、菊池くんに似てた!」

「そうだな。あんな小さくて、抱えるのすごく緊張した」

「あはは。皐月くん、固まってたもんねー」



菊池一家と別れ、最寄りのバス停へと歩く道すがらも、私たちの会話は途切れない。

笑い声を漏らしながら、つい数時間前に見た微笑ましい光景を思い出す。

ひょいっと気軽な感じでほのかから赤ちゃんを渡された皐月くんが、ぎこちない手つきで抱っこしていた姿。

赤ちゃんの性別は女の子で、菊池くんなんかすでに「嫁に出したくない」発言をしていた。ほのかに窘められていたけど。

皐月くんも……もし子どもができたら、あんなふうに子煩悩になるのかな。

自然とそんなことを思いながら、隣を歩く人物を盗み見る。

綺麗な、横顔だ。
メガネを支えるスッと通った鼻筋。薄めの唇。涼やかな目もと。

男の子でも女の子でも、皐月くんに似たら、きっと美人さんになるだろうなあ。

勝手に妄想は膨らんで、あたりを照らす夕日のせいじゃなく自分の頬が赤く染まっている気がする。

……いつか。
彼と私の間にも、尊いいのちを授かる日が訪れるのだろう。

今はちょっと、特殊な状況だけど……夫婦である私たちがそうなるのは、自然な流れ。

そう、きっと、いつか──……。
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