新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「……ッ、」



喉の奥が、引き攣れる。何の前触れもなく、本当に突然、目頭が熱くなった。

理由のわからない涙が、堪える間もなく両目からボロボロとこぼれ落ちて頬をつたう。



「礼?!」



気づいた皐月くんが、ギョッとして足を止めた。

私も同じように立ち止まり、あふれるしずくを指先ですくって呆然と眺める。



「あれ……? あれ、なんで、だろ……」



今すぐこの涙を止めたいのに、止まらない。

頬を流れるあたたかいそれをどうすることもできず、自分の両手のひらを見つめながら立ちすくんだ。

そんな私を、皐月くんが動揺した様子で見下ろしている。



「どうした、礼。どこか痛むのか?」

「ちが……や、えっと、わかんな……」



彼の問いにも上手く答えられない。自分の気持ちがわからない。

なんで。どうして。

さっきまで、楽しくて幸せな感情に満ちていたはずだった。

なのに今、私は、たまらなく悲しくて、つらいのだ。

何が悲しくてつらいのかは、わからない。

だけど急に自分の中がそんな気持ちでいっぱいになって、抑えることのできない涙が、次から次へとあふれてくる。



「ひ……っく、」



どうしたらいいのかわからず、途方に暮れた。

びしょ濡れの顔を覆い隠すように両手のひらをあて、嗚咽を漏らしながらうつむく。
< 83 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop