新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「ごめんね皐月くん! お待たせしました」
そんなことを言いながらリビングに続くドアを押し開けた私を、ソファに座っていた皐月くんが振り返る。
次の瞬間、彼はピタリと動きを止めた。
「あの……どうかな。髪型とかも、ちょっとがんばってみたんですが」
皐月くんのいるソファの傍らに立ち、もじもじと訊ねてみた。
照れくささからつい敬語になってしまったうえ、しきりにうなじのあたりに触れて落ちつかない。
そんな私の様子をしばらく眺めた皐月くんが、ふと頬を緩めた。
「浴衣もその髪も、似合ってるよ。……かわいいな」
「あ……ありがとう」
少しの間のあと付け加えたひとことは、彼もどこか照れながら言っていたように思えて。
はにかんだその表情に、きゅーっと心臓を射抜かれる。
お礼を伝えつつ、私はますます羞恥心でいっぱいになってしまった。
8月某日。今日は、皐月くんと約束した花火大会が開催される日だ。
南の方から台風が近づいてきてはいるものの、幸いこのあたりの天気は今日いっぱい晴れの予報。
絶好の花火大会日和を迎え、私は張り切って出かける準備を整えた。
薄藍や赤い色の椿がオフホワイトの生地に咲き乱れたデザインの浴衣と臙脂色の帯は、先日クローゼットの中の衣装ケースから見つけ出したものだ。
ピシッとプレスされた綺麗な状態で保管されていて、購入以降まだ1度も着ていなかったのかもしれない。
ショートボブの髪は右サイドだけを編み込んでピンで留め、パステルカラーの色とりどりな花びらが重なったような造りの髪飾りをつけた。
自分で着付けるのに手間取って、あらかじめ皐月くんと決めていた家を出る時間ギリギリになってしまったんだけれど……皐月くんに褒めてもらえたし、がんばってよかった。