新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
花火大会が開催される河川敷の最寄り駅周辺は、花火の打ち上げが始まる2時間前でも混雑していた。

メインの花火以外にも様々な出店や催し物があるので、早くから訪れる人は多いのだろう。

にぎやかなその雰囲気がすでに楽しくて、ワクワクが止まらない。



「会場の近くまで、5分くらいで着くよ。そこからまた少し歩くけど、大丈夫そうか?」

「うん。足が痛くなりにくいっていう下駄を選んだから」



駅前から10分おきに出ているシャトルバスの座席に落ちついたところで、皐月くんが気遣わしげに訊ねてきた。

私が笑顔で答えると、ホッとしたように表情を緩める。



「そうか。何かあれば、いつでも言って」



今日も今日とて、皐月くんの過保護ぶりは健在だ。

ちょっぴり苦笑しつつ「ありがとう」とお礼を伝えたあと、先ほどの彼の口ぶりから気になったことを訊ねてみる。



「皐月くん、この花火大会に来たことあるの?」

「あー……それなんだけど。実は前に1度だけ、礼と来てて」

「えっ?!」



予想外の返しに目を丸くした。

そんな私へ、彼はさらに続ける。



「たしかあれは、3年前だな。ふたりきりじゃなくて、同期の何人かと一緒だった」

「えー、そうなんだ」

「ああ。だからまあ、ここでも何か思い出す確率は、ゼロじゃない」



1度は顔を正面に向けていた皐月くんが、再びこちらに視線を戻す。
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