新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「何か異変があれば、すぐに教えてくれ。着いたらはぐれないように気をつけろよ」

「……わかった」



うなずいた私を確認し、また前へと向き直った皐月くん。

今、私がひそかに抱いている願望を、彼は知らない。

……はぐれないように……手を、繋いでくれたり、しないのかな。



『この生活にも、俺にも……慣れるのは、少しずつでいい。ちゃんと、俺は待つよ』



不安定な状態になっていた私を宥めるための、不可抗力ともいえる2度の機会は別として……皐月くんは私の退院日の夜に誓った言葉を、あれから1ヶ月以上が経つ今日まで忠実に守ってくれている。

だけどそろそろ……私はもう少し、彼に触れて欲しいと思ってしまっているのだ。

自分の考えに、自分でも照れた。なんだかこれって、欲求不満みたいではしたない?

けど、思ってしまうものはどうしようもない。
まるで、私の中に眠っている7年分の記憶を持つ“私”が、無意識に彼のことを切望しているみたいだ。

それに──もしかしたら皐月くんと触れ合うことでも、記憶の枝を揺らすキッカケになるんじゃ、なんて……可能性が、ないこともないだろうし。
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