新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「ちょっと……予想と違って脳が混乱してる。りんご飴みたいな甘さがガツンとくるもんだと思ってた」



たしかに最初は、あんずの甘酢漬けの酸味が名前の予想を裏切ってくるかも。

彼の感想に同意したい気持ちはあれど、すぐに口から言葉が出てこない。

だって……まさか、直接私の手から食べるなんて。

びっくりしたし、それにとても、顔が熱くなってきた。

皐月くんがお礼とともに、屈んでいた上半身を起こす。

彼にとっては何でもないようなことなのだろうけど、私は羞恥心からその顔を見られなかった。

たった今皐月くんが食べた分だけ小さくなったあんず飴を、どう扱おうか迷う。

けれど、いつまでもこうして固まっていては不自然だ。

私は思いきって、またあんずにかぶりつく。



「礼、髪が」



つぶやきを落とした彼の指先が、優しい仕草で私の横髪を耳にかけた。

編み込んでいない左側の髪の毛がうつむき気味だったせいで垂れていたところを、水飴につかないようにしてくれたのだろう。

それがただの善意で、しかも仮にも夫婦という間柄、特別なことではないとわかっているのに───私はもう、必要以上に反応してしまう自分を、隠すことができない。
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