【社内公認】疑似夫婦-私たち(今のところはまだ)やましくありません!-
「あ~……うん、これは……蕩けるー……」

 ふにゃん、とベッドの中で体を開いた森場くん。その拍子に彼の膝の頭が私の膝に触れ、〝ビクッ〟とした私は直立する。

「あ、ああ、あのっ……」

「やばいですね、これ……あー、これはやばーい……」

 やばいですよ! いろんな意味で。
 斧田さん早く帰ってきて!

(どうしてこんなことに……)

 気になっている相手と会社の中で同衾なんて、漫画じゃないんだから。っていうか漫画でもここまでの条件が整うのは難しいでしょう。ほんとにどうしてこうなった……。

 布団の中の温度がどんどん温まっていって、〝もうこれは私だけの体温じゃない〟とわかってしまうほど。ゆるゆると溶ける熱を分かち合う感じが無性に恥ずかしく、私は目深に布団を被って一人照れていた。

 すると不意に、隣の森場くんが小さく笑う気配がする。

「懐かしー」

 ――などと、そんなことを仰るので。

 私は顔を彼のほうに向け、ぽかんとしてしまった。

「…………〝懐かしい〟?」

「懐かしくない? よく一緒にお昼寝させられてたじゃん」

「は」

「俺んちのベッドで。……ね、〝なっちゃん〟」

「あ……う、ぇ……」

 ――青天の霹靂。とんでもなく不意打ち。

 このプロジェクトに入ってからもう結構経っていたから、完全に油断していた。

(お……憶えてた――!?)
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