好きになるには理由があります
 


 昼休み、杵崎が社食に行くと、また深月が居た。

 いや、広い社食だ。

 今までも、いつも何処かに居たのだろうが、最近、やたら目につくな、と思っていた。

 すると、その深月が居る窓際の席から、金子由紀が手を振っているのに気づいた。

「杵崎、此処空いてるよー」

 ……空いているのはわかっているが、あまりそこには行きたくない。

 そう思っていたが、深月もこちらを見て、ぺこりと頭を下げてきた。

 よそに行くのもなんだかタイミングを逃した感じだ、と思いながら、杵崎は仕方なく、深月たちのテーブルに行った。

 深月が由紀たちと話しているのが聞こえてくる。

「それでね、従兄弟の子が一緒に遊ぼうって言うんですよ。

 お正月にアメ賭けてやったので、味しめちゃって。

 なんでしたっけ?
 ほら、百人一首でやるやつ。

 えーと、確か……」
と言ったあとで、深月は手を打った。

「ハゲめくり!」

「坊主めくりだ」
と言いながら、杵崎が由紀の隣にトレーを置くと、由紀が呼んでおいて文句を言ってくる。
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