好きになるには理由があります
「あんた、ほんとに秘書室行きたいの?」
「え?」

「楽しそうじゃない、総務で充分。
 こっちの方が向いてて、やり甲斐があると思うのなら、いくら好きな男に言われても、従う必要ないんじゃない?」

 何故、突然の助言、と苦笑しながらも、
「……ありがとうございます」
と深月は礼を言った。

「でもほんとに、支社長とはなんでもありませんから」
と言ったのだが、膝乗りハンターさんは小声で言ってくる。

「いやいや。
 支社長はあんたにメロメロに見えるわよ」
と。

 いや、なんで小声で言うんですか。
 広めてやるって言いませんでしたっけ?
と思いながら、深月は言った。

「そんなこともないですよ。
 それに秘書室には、靴にガラスが入ってたら、やだから行きません」

「なんで、靴にガラスが入るのよ。
 っていうか、あんた、社内で靴脱ぐことあるの?」

「……言われてみれば、そうですね。

 でも、定番じゃないですか。
 トウシューズに画鋲とか、ロッカーにある衣装がズタズタとか」

「なんの衣装よ」

 ……神楽のですかね?

 だが、さすがに会社には持ってきていない。
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