好きになるには理由があります
 


 で、結局、なんだかんだで陽太は外に押し出され、清春が蔵の戸を閉めた。

「おいおい、なんの騒ぎだ」
と今来た誰かが訊いている。

「大丈夫だ。
 たぶん、まだ中盤だ」

 映画か……。

 いやいや、さっさと終わらせて欲しいんですけどっ。

 逃げられないよう、清春に後ろから抱きしめられたまま深月は聞いていた。

「なんだ、清春。
 深月を連れて蔵に閉じこもったのか」
とそのおじさんは笑ったあとで、

天岩戸(あまのいわと)だな。
 全裸で踊れ! 船長っ」
と言う。

 きゃーっ、と女子たちが歓声を上げた。

「いや、俺が全裸で踊って清春が出てくるわけないじゃないですか」
と陽太が言うのが聞こえた。

 そのあと陽太はしゃべらなくなり、おじさんたちが酒を呑んでいる騒ぎだけが聞こえてくる。

 ……あの、忘れられてませんか、私たち、と深月は思っていたが。

 忘れられてはいなかった。

「深月ーっ。
 皿ーっ」
とおばちゃんが人質の深月に向かって叫ぶ。
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