好きになるには理由があります
「よし、無事に姫を鬼から取り返したぞっ」
と満面の笑みの陽太に、

 いや、貴方が鬼のようでしたよ……と深月は思う。

 重機で突っ込んでくる陽太の顔は鬼神のようだった。

 本当にやられると思った。

 まあ、だからこそ、清春も手を放してくれたのだろうが。

 本番もあの勢いで鬼やったら完璧だな、と思いながら、今、先祖伝来の蔵と未来の花嫁を打ち壊そうとしたショベルカーを見る。

 そんな深月の後ろで、清春と杵崎が、

「約束だぞ」
と言っていた。

 ひい、と思ったとき、突風が吹いた。

 ちょっと遅めの春一番が。

 少し木の根が盛り上がっているところに乗り上げて止めていたショベルカーが風に煽られて傾く。

「あーっ」
と全員が叫んだ。

 ガツッと音がして、振り上げられていたショベルが神楽殿の屋根に突っ込んだ。

 簡易の神楽殿の屋根にぽっかり穴が空く。

「……す、すみません」
と陽太は謝ったが、

「いや、俺のせいだ」
と清春が言った。

「俺が祭りの前に、清らかでなければならない深月に手を触れようとしたから、神罰がくだったんだ」

 二人が反省の弁を述べる中、
「あー、まあ、なんとかなるだろうー」
と重機を戻しながら、おじさんたちは屋根を見て言う。
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