好きになるには理由があります



 人は面をつければ神になる。

 神楽では、面をつけていないのが人。

 面をつけたものは神だ。

 鬼神と化した陽太は舞台に現れ、人々を脅して歩く。

 舞台上で人間たちが舞っている間、陽太は下に降りて、浜の子どもを本気で脅し、やっぱり泣かれていた。

 白髪の大きなカツラと赤ら顔の面で舞う陽太を見て、深月はあの日の夢を思い出していた。

 獅子舞の獅子にかぷっとやられる夢だ。

 何処か似ていたからだろう。

 深月はよく見えるように漁船の方に移っていたが、横に居た、
「深月、皿ーっ」
のおばちゃんが陽太を見ながら、頷いて言う。

「あんたの彼氏は格好いいねえ」

 うん。
 今は面をつけているから、顔は見えないけど。

 でも、だからこそ格好いいな、と深月は思っていた。
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