好きになるには理由があります
 面やカツラや、身体を大きく見せるための重く派手な衣装で陽太本人の面影はないが。

 それでも格好いいと思う。

 やっぱり、私はこの人の見た目に惹かれたわけではないんだな、と深月は思った。

 そして、おばちゃんたちにもそう思ってもらえて、本当に嬉しい。

 そのおばちゃんは陽太を見たまま、微笑み、呟いていた。

「……ま、長年使い込んだ皿を全部、重機で叩き割ろうとした男だけど」

「すみません……」
と深月は苦笑いして謝った。

 やがて陽太は舞台に戻る。

 人々を脅す鬼だが。

 鬼は神でもある。

 陽太は大地を踏めしめるように足を鳴らし、他の神々を起こして、地上を去った。

 深月はよく見えるように漁船に移っていたが、舞い終えた陽太の許に駆け戻る。

「お、お疲れ様ですっ。
 すごい迫力だったですっ」
と言うと、陽太が面を外した。

 かなり息を切らして疲れているようだったが。

 ……どうしよう。

 顔に惹かれたわけではないと言いながら、やっぱり格好いいなと思ってしまったと思う深月を押しのけるようにして、清春と杵崎が現れる。

「いちゃついてる暇ないぞ」

「そうだ。
 さっさと着替えろ」
と二人に急かされ、陽太は着替えに行ってしまった。





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