都の剣〜千年越しの初恋〜
いつかある別れに、サシャの胸には寂しさがあった。それが何故なのかはわからない。

サシャの胸に今ある感情が何か、サシャにはわからない。

「ツキヤ」

ツキヤは、まっすぐサシャを見つめる。その目には、欲は一つも感じられない。まるで静かな湖のように、ツキヤの目は美しかった。

「いつか、私の真実を話したい。その時は…ありのままの姿を見せ続けてくれるか？」

サシャが正体を話すと、みんなサシャから離れていってしまう。怒りに触れてしまうのが怖いからだ。

サシャは、それが一番嫌だった。どんな身分であろうと、ありのままでいてほしい。作られた笑顔を向けられたくない。それがサシャの願いだ。

「…大丈夫です」

ツキヤは、サシャに笑いかける。

「私は、歩くことしか知りません。だからきっと、あなたが何者であったとしてもこのままです」

「……その言葉、信じるぞ」

たとえ、嘘であっても嬉しかった。



どちらからも想いを伝えていないのに、二人は自然と恋人同士の関係になった。

サシャは城を抜け出す日を増やし、ツキヤと行動を共にした。

ツキヤは、サシャの真実を知っても宣言通りありのままでいてくれている。サシャは、ますますツキヤを愛するようになった。
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