転生令嬢は小食王子のお食事係
 王妃宮にはなかったが、この王子宮にはある。
 薪をくべる穴は専用の蓋でしっかり閉じられているので、一見そうとは見えないが、間違いなく薪釜だった。
「おお! すごい! 薪釜があるんですね! パン屋さん以外で初めて見ました!」
 私の言葉にエマが驚きつつも嬉しそうな声を上げた。
 薪釜がある屋敷なんてそうそうない。
 それこそエマが言うようにパン屋さんでもなければ頻繁に使うこともないだろうし。
 でもなぜかこの王子宮にはあった。
 料理をしない厨房にある薪釜は、コンロやオーブンよりもさらに使用頻度が少ないだろう。
 本当にもったいない!
 きっと薪釜で焼いたピザは最高だろうし、そのほかにもパイやタルト、クッキーなどもさっくりと焼き上がるはずだ。
「薪釜ねぇ……。たぶん許可をってなると侍従長のノーマンさんに聞いたほうがいいと思うけどあの人も忙しいし……」
「ノーマンさんは普段どちらにいるのかしら?」
「さぁ? 俺もよく知らないんだよね」
 私の言葉にテオは首を傾げる。
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