転生令嬢は小食王子のお食事係
 それからテオは仕事に戻ると言って出て行った。
 去り際に『食べるから料理残しておいて』と言い置いて。
 それがなんだかくすぐったい気持ちになる。
 私とエマはというと、テオの希望を叶えるためだけではないが、多少触発されて、薪釜でできる料理を作りまくった。
 テオと入れ替わりでやってきたマリオンに、もう一枚焼いたピザの試食をしてもらうと「おいしいけれどカトラリーだと少し食べづらい」という感想をもらったため、違う形にしてみた。
 平らな生地に具材をのせるのではなく、具材をピザ生地で包んで焼くことにした。
 円形に伸ばした生地の半分に具材をのせると、もう半分の生地を折りたたみ半円にする。中の具材が出てこないように、合わせた生地は端の部分をねじるようにしてしっかりとくっつけた。
 中まで火を通す必要があるので、薪窯の中でもピザを焼いた場所よりやや低温の場所に置き、じっくりと焼いていく。
 火が通るにつれ、生地がこんもりと膨らんでいくのが見ていて楽しい。
 やがてこんがりと表面がきつね色になったところで取り出してもらう。
 包み焼きのピザ・カルツォーネの完成だ。
 これならばカトラリーでも食べやすいし、持ち運ぶときも楽だ。
 他にも、ソーセージとじゃがいものパイに、スコーンも焼いた。スコーンはプレーンのものと、お茶の葉をいれたもの、ナッツ入りの三種類だ。
 夢中になっていたらお昼を少し過ぎてしまった。
「マリオン、エマ」
 一度離れに戻ってきて、私はふたりに話しかける。
「ここに来てずっと働きっぱなしだったので、今日の午後はゆっくりしましょう」
「いいのですか?」
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