転生令嬢は小食王子のお食事係
 王妃様の依頼とはいえ、こんなことを引き受けてしまってどうしようと今でも思っている。
 三ヶ月とはいえ、まだまだ先は長く、王妃様の期待に応えられるかは自信がない。
 これで王子宮がもっとちゃんとしたところであったなら勝機はあったかもしれないが、使用人は好き勝手にしているし、そもそも第二王子はいないし……。
 ハァとため息を吐いてから、私はバスケットの中のスコーンに手を伸ばす。
 薪釜で焼いたからなのか、今日のスコーンはきれいな狼の口ができている。
 狼の口というのは、スコーンにできる側面の腹割れ線のことだ。この部分から横半分に割って食べるのがスコーンはいいとされている。
 狼の口から半分に割ると、まずは何もつけずに食べてみる。
 割るときにも感じたが、やはり薪釜で焼くと表面がとてもカリッと焼き上がる。カリッとした食感のものが好きなので、とても私好みにできたと思う。
 残りの半分には王妃宮の料理長特製のイチゴジャム。
 甘みとイチゴの酸味がちょうど良くて、王妃様が好まれるのもよく分かる。
 スコーンを味わい終え、お茶で口を潤していると、どこかから話し声が聞こえてきた。
『……大丈夫なんですか?』
< 155 / 215 >

この作品をシェア

pagetop