拝啓 元カレ上司サマ
麗香にとっての煌太とは、男性を信じてもいいのだと思わせてくれた初めてのヒトだった。
あれ程誰とも付き合わない、結婚なんて尚更と考えていたのに、そんな馬鹿な考えに終止符を打ってくれたのは、煌太なのだ。
彼と過ごした数年間は、楽しくて愛しくてそして苦しいものとなってしまったけれども、例えば、今ここで煌太と直接会話してしまったならば、もしかしたら…と思えば思う程、走馬灯のように現れては消える二人の思い出の数々が、麗香の心を覆い尽くす。
がしかし、そんなウジウジした麗香を見透かしたように宗也が言う。
「さて岡谷課長、私の妻が大変お世話になりました。彼女の夫として御礼を申し上げます」