拝啓 元カレ上司サマ
麗香もアワワと、あたふたしていると、宗也が彼女の腰を抱き寄せて言う。
「もう会社を退職しましたが、色々妻がお世話になりありがとうございました。妻にとって、良い思い出となったでしょう」
そうだよな麗香と、彼女の頭に口付けた。
ラブラブな二人に当てられた煌太以外の人達は、もう勝手にやってくれと会議室を後にする。
煌太だけは暫く茫然自失の状態でいたけれど、ハッと我に返って宗也に言った。
「周防さんは美人な上にとても気の利く女性でした。さぞや田上副社長の力になられることでしょう。どうかお幸せに!」
最後は嘘偽りのない、満面の笑み。
全く麗香を惜しがる素振りも見せない。
記憶が戻ったことを知らない麗香は、煌太の態度を少し寂しくも思ったが、これが現実で自分は宗也の妻なのだから、煌太に依存していた甘えた女の子のままではいけないと、はっきりと自覚するのだった。
「岡谷課長、在職中は本当にお世話になりました。それに、突然の異動の話も受け入れてくださって感謝しております。これからは主人のために生きていこうと思います」